視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)患者さんの補体
──脳・脊髄内で攻撃的になる補体のはなし──
監修︓ 九州⼤学⼤学院医学研究院 神経内科学 教授 磯部紀⼦ 先⽣
脳内の神経系は、情報伝達に関わる神経細胞(ニューロン
)と、神経細胞の⽣存や機能を助けるアストロサイト( )などのたくさんの細胞からできています。アストロサイトの⻑くのびた⾜突起には、アクアポリン4(AQP4 )というタンパク質が存在し、⽔を通過させる役⽬を果たしています。抗AQP4抗体陽性のNMOSD患者さんでは、免疫系が不具合を起こして産⽣された⾃⼰抗体が補体を活性化させてしまい、それによりさまざまな症状が引き起こされます。
※イメージであることをご了承ください
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それぞれの役割

神経細胞と髄鞘︓
神経細胞(ニューロン)は、他の細胞から受け取った信号を軸索を通して次の細胞に伝える。髄鞘は、神経細胞から⻑くのびる軸索を覆っている膜で、電気を通しにくい脂質で構成されている。軸索を覆い保護することで、神経伝達のスピードを速める。

アストロサイト︓
神経細胞の⽣存や機能を⽀える細胞。神経細胞を⽀えるとともに、⾎管から取りこんだ栄養や⽔分を神経に与え、⽔分を通過させる。

アクアポリン4(AQP4)︓
アクアポリン(AQP)は⽔の通り道となるタンパク質の総称で、AQP4は脳・脊髄内の⾎管周囲やアストロサイトの⾜突起に多く存在する。

抗AQP4抗体︓
病態の原因となる⾃⼰抗体。AQP4に結合して、補体の活性化のスイッチを入れる。

形質細胞︓
抗体を作り出す細胞。抗AQP4抗体は形質細胞から産⽣される。

不活性状態(静かな状態)の補体︓
異物の侵⼊に備えて待機中の補体。

活性化した(攻撃的になった)補体︓
抗AQP4抗体がAQP4に結合することでスイッチが入り、攻撃的になった補体。

活性化した補体が⾷細胞などの免疫細胞を呼び、攻撃させる。

⾷細胞︓
体内に侵⼊してきた外敵や異物など、⾃分のからだに不要なものを⾷べてしまう。